ドルと米国債の関係——基軸通貨はなぜ強く、何が揺らすのか
世界の貿易や借金の多くがドルで行われ、米国債は世界の安全資産とされてきた。ドルの需要を支えるもの、米国の財政と国債の増加、脱ドル化の議論を整理します。
この記事の要点
- ドルの強さは、貿易・借金・外貨準備でドルが「必要とされる」ことに支えられている
- 米国は国債を発行してドルを世界に供給し、世界はそれを安全資産として買ってきた
- 財政赤字の拡大や脱ドル化の動きは、この仕組みを少しずつ揺らす要因になる
ドルが必要とされる理由
- 貿易の決済:原油や穀物、多くの資源がドル建てで取引される
- 借金:世界の企業や国が、ドル建てでお金を借りている。返すためにドルが要る
- 外貨準備:各国の中央銀行が、いざというときのためにドルや米国債を持っている
- 安全資産:危機のときには、まずドルと米国債が買われてきた
需要がある限り、米国はドル建ての国債を発行してお金を集められる。世界は、利息のつくドルとして米国債を持つ。この循環が、ドルを基軸通貨にしてきた。
米国の財政と国債の増加
米国の財政赤字は大きく、国債の発行残高は増え続けている。国債が増えれば利払いも増え、その利払いのためにまた国債を発行する。市場がこれを「持続できない」と感じ始めると、米国債に上乗せの金利が求められ、長期金利が上がる(国債の金利が上がるとき)。
2026-11-04 記録
2026年10月、米国の10年国債の利回りは一時5.36%台と約24年半ぶりの高さになった。高い金利は、世界のお金を米国に引き寄せ、ドルを支える方向に働く。ただし、それが財政への不安の裏返しなら、強さの中身は以前と同じではない——筆者はそう見ている。
脱ドル化の議論
近年は、ドルに頼らない動きも語られるようになった。
- 一部の国どうしで、資源などの取引を自国の通貨で決済する動き
- 中央銀行による金の買い増し(金は信用が縮むときに強いか)
- 制裁でドルの決済網から締め出されるリスクを避けたい国の動き
ただし、ドルに代わるほど大きく、自由に取引でき、信頼される通貨は今のところ見当たらない。脱ドル化は「すぐに起きる崩壊」ではなく、長い時間をかけてドルの比重が少しずつ下がっていく可能性として見るのが現実的だろう。
個人にとっての意味
- ドル建ての資産(米国株、米国債、外貨預金)は、ドルの価値と円との為替の両方の影響を受ける
- ドルの金利が高いあいだは、ドル建ての預金や債券の利息は魅力的に見える。ただし円高になれば、円に戻したときに目減りする
- ドルの強さを支えている理由が変わっていないか、ときどき確かめる
筆者は、今のドルの強さは、高い金利と、AI関連への大きな投資が米国にお金を集めていることに支えられている面が大きいと見ている。どちらかの条件が変わったとき、強さは思ったより早く崩れるかもしれない。